気候変動は、地球の表面にある薄皮一枚と言われる空気の層で起きている気象現象の変動。長期的な変動と近年の変動があり、これらを総称しています。長期的な変動では、地球という惑星が本来持っている諸々の自然(太陽、地熱、水、風、植物系など)の物理的力学によって説明される気象現象と、その歴史的変化と捉えることができます。近年の変動は、それに追加して人間活動が原因となるあらゆる変化(CO2や有害物質の排出、森林破壊など)が係数的に付加され、結果として近年の地球温暖化や異常気象が発生し、その負の側面は私たちの知るところであり、問題となっています。
気候変動とCO2削減目標
2021年4月、アメリカのバイデン大統領はオンラインの気候変動サミットで、2030年までのCO2削減目標を従来の2倍相当まで引き上げました。また、前年の2020年10月に日本の菅首相は所信表明で2050年までのCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げました。
なぜ各国の首脳がCO2の排出削減の目標をたてるのか、ふと疑問に思ったことのある人もいるかもしれません。気候変動とCO2排出削減の努力との間には、どんな関係があるのでしょうか。
気候変動という言葉の意味については、言うまでもなく、地球表面の気候(気温、降水、雲などの多さや動き)の中長期的な変動の現象を指します。その中でも特に、人類の活動が自然現象に影響を及ぼしている「地球温暖化」の影響とみられる異常気象、集中豪雨や台風の頻発は、具体的な事例と言えます。
これらの異常気象による自然災害は近年甚大なものになっており、人類共通の課題として世界中で認識を深める様になってきました。そしてこの激甚化する自然災害のソリューションとも考えられるのが、人類の活動による地球温暖化の原因を抑止していこうとする動きで、最も抑止の効果が高いと評価されているのが二酸化炭素(CO2)の排出を削減することです。
もちろん二酸化炭素の排出だけを抑制すれば解決する訳ではなく、森林破壊や工場などからの排煙、人口の集中する都市部では緑地面積が少ないことや冷暖房装置によってヒートアイランドなど局地的な現象もあります。ただ、これらの中では二酸化炭素(CO2)の増加による気候変動、異常気象の影響が最も深刻という事から、各国でCO2削減の目標を立て、それを実行しようとしている訳です。
原油価格高騰とCO2削減目標の関係
気候変動問題の中で、CO2排出削減が鍵となる事は前述した通りですが、ただやみくもにCO2を削減する事にはリスクも伴います。2022年2月現在、そのリスクが表面化してきています。原油価格の高騰、米国の金利上昇、電力や物流費の高騰などにより、グローバルに物価高(インフレ)が加速しています。物価の高騰を打ち消す収入の上昇が伴わない限り、多くの人にとって経済生活を圧迫するものです。しかしながら、今回のインフレにより恩恵を受ける者もあります。恩恵を受ける者として特に取り上げたいのは石油・化石燃料業界です。
原油価格の高騰という事は、原油の売り手が儲かっている事を指します。この点を、気候変動の問題解決としていたCO2削減と照らし合わせると、2項対立の関係が浮き彫りになります。
高効率のCO2削減を考える際に、原油の削減は必須となります。しかし、この様な原油価格高騰下でも、石油の需要を減らす事はできません。石油の代替がまだ普及してないからです。また、原油価格高騰を抑えるためにOPECに対して原油の増産を依頼する事は米国のバイデン大統領でさえ出来ませんでした。気候変動問題の解決策としてCO2削減目標を掲げているバイデン米大統領。CO2削減と原油の増産は相反する行為であり、気候変動問題を扱う者にとって石油増産はしてはならない事であり矛盾となるのです。こうして石油の生産者たる化石燃料の採掘者側の繁盛を簡単には打ち消す事が出来ないのです。それどころか、この石油化石燃料産業に関連する者は利益を求め、従来の人間活動の一端たる経済活動の側面で、気候変動問題のCO2削減とは相容れない形になっています。
気候変動の世界的な取組み
気候変動は、あえて言い換えると、地球レベルの生命活動と言ってもおかしくありません。このスケールの大きな問題に、どうやって取り組んでいけばいいでしょう。はじめは国連がその舞台となりました。1992年に国連総会で気候変動枠組条約(気候変動に関する国際連合枠組条約)が採択され、1994年に発行されました。近年の気候変動のニュースでもよく耳にするCOP~~(気候変動枠組条約締約国会議)というワード。(~~には開催回数に該当する数字が入ります) このCOPの前身が国連の気候変動枠組条約でした。COPでは近年の気候変動、地球温暖化を解決すべく数値目標を掲げてきました。この世界的な国際会議が先導する形で、企業や個人の社会スタイルを変革していこうとしてきました。気候変動に関する話題が目に見える形で日々取り上げられるにつれ、変革のリアリティやスピードも上がり、今では実際に我々の行動選択に切迫感をもってせまってきています。
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